スポーツ選手・表現者の食生活から学ぶ

一流のパフォーマンスは真似できなくても、そのパフォーマンスを維持するための習慣なら真似できるかもしれない──

分野グループ: アスリート

日本競馬を代表する騎手の一人で、夏に強いことでも知られる戸崎圭太さんは、食事に関して意識が高く、食事法としてテニスのジョコビッチ選手が取り入れたことでも有名な、小麦などを抜く「グルテンフリー」を実践している。グルテンフリーを実践する以前は、ラーメンを週に何度も食べるような食生活で、特別食にストイックだったわけではなかったものの、じんましんなど体調不良に悩み、トレーナーに相談。その際、トレーナーに連れて行かれた病院で、腸内環境改善の一環としてグルテンフリーを勧められる。

じんましんなどが仕事への支障もあったことから、戸崎さんは覚悟を決め、完全なグルテンフリー生活に挑戦する。麺、パン、揚げ物、また小麦が使われている醤油などの調味料から飲み物までグルテンフリーを徹底した。期間は「とりあえず3ヶ月」と医師には言われていたが、かゆみ自体は1ヶ月ほど続けていたら治っていったという。効果への手応えを覚えたこともあり、結局丸2年間続けた。自分にはグルテンフリーが合っていたのか、以来じんましんも出なくなり、また夏場にばてるということもなくなった、と語っている。

その他、戸崎さんはメンタル面でのコンディショニングの一環として、瞑想を行なったり、「今やることに集中する」「とにかくコツコツとやる」ことを心がけているという。

長年アルゼンチン代表として活躍し、ワールドカップ優勝も経験している世界的なサッカー選手のリオネル・メッシ。しかしメッシは健康面での不安があり、若い頃は怪我に悩まされ、また20代後半まで、試合中に吐き気を催すこともたびたびあった。ドイツに敗れた2014年ワールドカップ決勝もそうだった。この頃、アルゼンチン代表のチームメイトの紹介で、イタリアの栄養士で医師でもあるジュリアーノ・ポーザーと出会い、彼の指導のもと、根本的な食生活の見直しを始めた。

見直しの柱は、砂糖や甘い飲み物、精製された小麦を避け、添加物や農薬などで汚染された食品も控えること。代わりに口にするのは、質のよいミネラルウォーター、エキストラバージンオリーブオイル、全粒粉の穀物、自然食品や旬の食材、ナッツなど。また、肉を減らし、魚を食べる回数を増やしたという。加えて、「飲むサラダ」と称される、南米で広く愛されているマテ茶をよく飲むようになった。

メッシ自身も、若い頃の食生活を後年になって振り返り、チョコレート、アルファホール(中南米の菓子)、炭酸飲料ばかりだったと語っている。ピザも大好物だったが、食事の改善によって一切口にしなくなったようだ。「昔は体に悪いものばかり食べていたよ。──でも今は食生活を改善したんだ。たまにワインも飲むけど、あまり問題ではないね。吐き気については変化がはっきりと分かった」とメッシは言う。

ノルウェー代表のサッカー選手で、世界に名高いストライカーであるアーリング・ハーランド。彼はサプリメントやプロテインに頼らず、本物の食品ホールフードによって身体の管理を行なっている。特に自然の食材へのこだわりが強く、水道水は飲まずにろ過した水を飲み、加工食品も避ける。また、生乳や牛肉は地元の農場で牧草を食べて育った牛のものをわざわざ選ぶようにし、なかでもハツやレバーなど内臓肉を食べる。サーモンやサバなど魚料理も食事メニューに盛り込む。日々の食事や発言などからは、その量もさることながら、質も大事にしていることが窺える。

体のケアという点では、食事以外に、トレーナーによる入念なストレッチや、サウナと冷水浴を交互に繰り返す温冷交代浴も実践している。あるいは睡眠も非常に重視し、朝は体内時計を整えるためにも日の光を浴びに散歩に出かけ、夜になると睡眠を妨げるとされるブルーライトを避けるようにしている。ストイックなこの姿勢について、ハーランドは次のように語っている。「やらない理由がないよね? 自分の人生のため、そしてサッカーキャリアのためだ。できる限り、誰にでもできる簡単で小さなことを一つずつ最適化していくことに、何の不都合があるっていうんだい?」

米国メジャーリーグでも活躍する世界的な野球選手の山本由伸選手。彼は筋力トレーニングを一切しないことで知られる。というのも、若い頃に出会った柔道整復師でトレーナーの矢田修さんの指導のもと、柔らかさのなかに強さを求め、自分の体をうまく使うということに重点を置いているからだ。筋トレをしない代わりに、やり投げの動作やブリッジなど、体の使い方に立ち返る運動を取り入れている。

食事の管理は、専属シェフの菊地慶祐さんが担っている。ある日の献立の一例として、玄米雑穀ごはん、吸い物、牛フィレのグリル、温野菜、ビーツのゆずサラダ、炙り鯛と鰹のたたき、茶碗蒸し、ヨーグルトといった組み立てが紹介されている。食材のなかでも好物は、疲労回復に効果があるとされるコラーゲンが豊富ななまこだという。

当初、マッサージなど身体のケアについては気遣っていたものの、それでも軽い肉離れなどもあり、そのなかで山本選手が改善しようと考えたのが、食事だった。食生活についてしっかり取り組むようになってからは、「疲労回復のスピードが速くなったと思えるようになったし、去年も一年間カラダに不安なく過ごすことができた。食事の大切さをすごく感じましたね。 やっぱり、カラダに直接入ってくるモノなので、今はトレーニングより大事だと思っています。」と、Tarzanでのインタビューで語っている。