料理をしたい。でも、いざ作ろうとすると、献立を考え、材料をそろえ、いくつもの工程をこなさなければならない。面倒だし、疲れる。そんな人に向けて、料理研究家の土井善晴さんが提案するのが、日本人が昔から大切にしてきた食の基本の形、「一汁一菜」である。
一汁一菜とは、ご飯、そして味噌汁と漬物、といういわゆる和食の基本スタイル。ただし、この型にこだわりすぎる必要はないと土井さんは言う。もし大変なら、ご飯と、具だくさんの味噌汁さえあればいい。「考えることはいりません。日常の食事を一汁一菜と決めてしまえば、食事作りのストレスはなくなります。」一汁一菜では栄養が足りないのではないか、と心配になるかもしれない。でも、土井さんは、日本人はずっとこの食事を続けてきたのだから、それで元気に健康でいられるはずだ、と語る。
また、必ずしもご飯と決めつける必要はなく、パンでも麺でもかまわない。大事な点は、毎回献立を考え直すことではなく、ひとまず日々の食事は一汁一菜という「型」を一つ決めてしまうこと。
それでは、土井さん自身は日々どんな食生活を送っているのだろうか。土井さんのSNSに並ぶのは、旬の素材をそのまま活かした、驚くほど簡素な一品。たとえば、梅干し味噌汁(「うめぼしみそしる ねっとうでとくだけ 元気でます」)は、その引き寄せられるような魅力的な写真も相まって、多くの人の支持を集めた。作り方は簡単で、お椀のなかに味噌と海干しを入れ、熱湯を注ぎ入れる。味噌を溶かしながら、梅干しをほぐしていく。梅干しと、味噌汁。代表的な日本のソウルフードの共演。
また、夏の風物詩と言える、切っただけのすいか(「これはとてもおいしいすいか」)の写真。季節の色味、味わい、手が込んでいるわけではない、簡素ながら、素材に詰まっている豊かさが十二分に伝わってくる。食事の量については、若いうちならまだしも、自分の年齢になったら一日二食でじゅうぶん、と土井さんは言う。「一日三食、一汁三菜は、戦後、暮らしが豊かになるまで庶民はしていません。」「一日二食でじゅうぶんです。それこそ一食にしっかりしたおかずがあれば、もう一食は、冷ご飯に梅干しとお味噌汁でいいわ、と、そんな感じ。」
我慢や節約の話ではなく、毎日の食事から「考える負担」を取り除き、かつ自然との結びつきや健康的な食生活を無理なく維持し続ける一つの型として、土井さんは「一汁一菜でよい」と提案する。
